過去に治療を行った症例報告です。治療部位毎に経緯などをまとめています。左側のカテゴリ選択から治療部位を選択できます。
高校野球部の生徒が、牽制の際、帰塁しようとした時に右肩を捻り、痛みで肩があがりにくく、ボールが投げられないと言って来院されました。
ジャイアンツの阿部選手も、同じようなプレーで日本シリーズを棒に振っています。
投球動作は一般的に四つに分類されます。
ワインドアップ期
コッキング期
加速期
リリース減速期
この生徒の訴えでは、コッキング期で、肩関節の後面に痛みが誘発されますから、 肩の外旋が強調されて肩後方の三角筋、棘上筋、棘下筋、小円筋のトラブルを第一に疑ってみました。
当たり障りなくRICEの処置で様子を見るのが普通かもしれませんが、秋の新人戦の日程も決まっていて、なんとかして欲しいと駆け込んできたわけですから、私としては、出来るだけそれに応えてあげたいものです。
先程、ピックアップした筋肉に鍼をしながら、少し肩を動かして(運動鍼)、また鍼の位置を変え動かしを数回繰り返しました。
直後は、痛みがほぼゼロになったので、注意点を指導して終了しました。治療時間は、10分足らずです。もちろん、損傷の程度によっては、手術や固定が必要です。
このような簡単な治療で痛みがなくなる訳ですから、大きな組織の損傷は考えられないでしょうから、固定も必要ないと判断しました。
左手の親指が何もしないのに痛いと言って来院された高齢の患者さん。
まずはご自身の判断で、レントゲンを撮ってもらわなければいけないと思い医院に行かれました。
痛み=レントゲンを撮って貰わないと納得しない方は多いですね。レントゲン検査は異常なく、骨の変形? 腱鞘炎?と言われ、塗り薬と、内部から体質改善の為と言われ漢方薬が処方されたそうです。
私に、体質改善なら一週間分で変わるはず無いと嘆いておられましたが。。。
熱感も自発痛もないので、炎症性疾患ではなさそうな様子ですし、(判断)関節と言うよりは、拇指球という感じですから、MPSだと思えます。
この患者さんは、最近人生の大きな決断を下されたようなので、想像でしかありませんが、そう言う心理的な要因も加わっているような症例です。
・江原鍼灸整骨院. 電話 075-463-8639
・京都市中京区西ノ京御輿ケ岡町10番地
・営業時間 9:00~12:00 16:00~19:00(水・土 午前中)
・定休日 日曜日 祭日
左右の殿部痛を訴えられる60歳代の女性の患者さん。
時間軸で言えば、半年以上前からの痛みですから慢性痛となります。
原因は、特に思い当たるフシがないので、外傷にともなう警告信号を意味する痛みでもありません。
マッサージ的な治療は、色々なところで受けたけれどあまり効果がなく、我慢も限界で、殿部を手で押さえないと歩けないから鍼をして欲しいと言う事でした。
場所的には、浅い部分と深い部分で感作している部分が見つかりましたので、大殿筋の上縁、小殿筋の上縁になりそうです。
結果、一回の鍼治療で嘘のように良くなりました。
慢性痛なのか?
急性痛なのか?
時間軸だけでは、計れないですね。そんな症例でした。
右脚に力が入らないと訴え来院された90歳の男性の患者さん。
今でも、バイクに乗って毎日のように、畑の水をやりにいくそうです。共同の畑で、水汲み場から自分が借りている畑まで数十メートルを、水を入れたバケツを持って往復するそうです。
痛いのかですか?と聞くと痛みは無いと仰ります。耳のほうはかなり遠く、言葉のやりとりにも困る場合があります。
深部反射、触圧テスト、異常は見られません。MMTも全く問題はないですし、歩行にも問題はありませんが、訴えは力が入らないです。普段と違う何かしら違和感があるのでしょうね。
今日、三回目の治療にお見えになりましたが、症状は四分の三は軽減しマシになったと言う事でした。
念の為、もう一度、深部反射、触圧テスト、MMT を確認しましたが、前回同様異常は見られません。
結局、治療としては、小殿筋のジャンプサインのあるポイントを直接リリースしただけです。ここが、患者さんが訴える症状の原因なのかどうかわかりませんが、上記テストで異常が見当たらないので、早急に危険因子を考える必要もないと判断して治療をしました。
私が臨床の現場で大事にしている事は、当たり前す過ぎて書く必要もないかもしれませんが、まず目の前の患者さんが、自分が診れる範囲の病態かどうか?そして、治療においては、ちゃんと自分の意識の下で、毎回同じところを触診でき治療に応用できるかどうか?この部分は、第三者に間違いを指摘して貰えるので、感覚だけに頼る治療よりも自己消化できるので、私は重宝しています。
(注:感覚を重視される治療を否定している訳ではありません。)
きっちりやって効果がでないのか?
適当にやってて効果がでないのか?
この差はとてつもなく多きな差です。
ですから、毎回同じ事が出来るかどうかは、とても重要な事なのですが、人それぞれ肉付きも体型も違うので、言葉で言う程簡単な事ではありません。この患者さんの場合も、トリガーポイントと言う概念だけで説明できない病態です。小殿筋のジャンプサインは多くの人に見る事ができます。
頭蓋療法、操体法、etc ほっておいても治ったかもしれません。それでも、患者さんにしてみれば、何かやって貰った満足感が治癒に導く場合もあります。そう言う物が働いた症例なのかもしれません。
中学生の女性の患者さん。短距離の選手で、選抜の強化選手です。
最初は、殿部の違和感だけだったものが、痛みを我慢しながら無理に練習を重ね、記録会に出ている間にハムストリングまで突っ張るようになってきました。本人とご家族の希望で、鍼治療を試してみたいと言う事でした。
運動考察としては、股関節の外旋で痛みがでます。
外旋筋の中でも、梨状筋は坐骨神経痛と呼ばれる症状を出す筋肉として有名です。しかし、梨状筋を鍼で探索しても、感作部位は見つかりません。結局、小殿筋の上部、大殿筋の大腿骨の停止部に感作されているポイントが沢山みつかりました。外旋時、股関節に外転、伸展が加わったのかもしれません。
次の日来院された時の話では、鍼治療を受けた日は患部が少し重だるかったが、次の日はすごく楽で練習も問題なく出来、自分でもビックリするほどの効果だっと言うお話しでした。
30代前半の女性の患者さん。
膝のロッキング現象を訴えられて来院されました。このような訴えは、一般的に半月板の損傷にようるものと言われています。膝が曲がったまま伸ばせない嵌屯(かんとん)症状のような病態ではありません。嵌屯症状の中には、著しい半月板の損傷が原因の物もあるかもしれません。
この女性の方は、三回の治療でロッキング症状はなくなりました。鍼治療で、半月板の損傷が治るはずありませんから、大腿の筋肉のMPSと考えるのが妥当ではないでしょうか?
初回は、大腿の筋肉は感作部位が沢山ありましたが、三回目の治療では、殆ど感作部位も見辺りませんでした。
・江原鍼灸整骨院. 電話 075-463-8639
・京都市中京区西ノ京御輿ケ岡町10番地
・営業時間 9:00~12:00 16:00~19:00(水・土 午前中)
・定休日 日曜日 祭日
気候の変わり目なのか?風邪を引いて咳を繰り返している間に、脇腹に痛みが起こった50歳代の男性の患者さん。
咳で肋骨が折れたのかと思い、病院に行ったところ、レントゲンは撮って貰えず、肋間神経痛と診断されたそうです。結局、痛み止めと湿布が処方され、暫く様子を見ましょうと言われたそうですが、三週間経過しても痛みが引かないので、紹介で来院されました。
特に、左の脇腹の痛みがひどいそうです。
肋骨への圧迫で痛みは誘発されないので、骨折は考えにくいと判断しました。体幹の左右の回旋、吸気時に痛みが誘発されます。
肋骨角の上部や前鋸筋のジャンプサインがあるポイントをリリースし、横隔膜も同時にリリース。他にも、斜角筋。肋骨角を押さえると脇腹に関連痛が生じます。上部胸椎付近で、呼吸が抑制されているように感じたので、呼吸リズムが回復するように治療をしました。
筋肉は繋がって動いていますから、単純に○○筋が原因とは言えないケースのほうが多いように感じますから、総合的に判断し治療を行っていきました。
治療後は、痛みが嘘のように楽になったと言ってお帰りになりました。もちろん、訴えられる痛みをうまく解除できても、それを機に良くなるのか?また、繰り返すのか?それは、誰にもわかりませんが、こんな簡単な治療で痛みが楽になるのなら、MPSと考える方が妥当ではないでしょうか?
・江原鍼灸整骨院.
・京都市中京区西ノ京御輿ケ岡町10番地
・電話 075-463-8639
・営業時間 9:00~12:00 16:00~19:00(水・土 午前中)
斜角筋症候群(胸郭出口症候群)の病態に似た50歳代女性の患者さんが来院された。
主訴は、マウンテンバイクに乗ったり、山歩きなどでリュックを背負うと、左手が正座の時のように痺れ感覚が無くなった感じ、手を振ると元に戻ると言われます。
先の、斜角筋症候群を読んでもらえばわかると思いますが、筋肉が神経や血管を圧迫して、痛みや痺れが起こるとされています。
他にも手根管症候群も同じ考え方ですね。世間で言われる、座骨神経痛の原因に梨状筋症候群がありますが、筋肉が神経を絞扼していると言う考え方です。ヘルニアの場合は、ヘルニアだけで痛みは起こらず、髄核から出たTNF-aと言う物質で神経線維に炎症→痛みと考えられているようです。
脊柱管狭窄症は、骨性の神経圧迫と言われています。ある時は、神経を押さえたら痛みが起きる。押さえるだけでは、痛みは起きない。炎症物質が起因している。etcいずれにしても、神経を押さえると=痛みと言う考え方がスタート地点ですから、筋性疼痛の事は見向きもされません。
NSAID,TPB注射、鍼治療、ましてや徒手治療に反応しそうな病態ではないですね。
この患者さんは、斜角筋を押さえると、上肢だけでなく、左脇腹まで関連痛が広がります。
深部反射や皮膚の触圧覚には異常ありません。
斜角筋や小胸筋のMPSと判断した方が、妥当ではないでしょうか?事実、罹患筋をリリースすると、随分症状が和らぎました。
40歳代の男性の患者さん。随分前に椎間板ヘルニアの手術をされています。
今回、右の脚に痛みが出たので、インターネットの検索で脊椎専門医を受診。MRI検査の結果、椎間板ヘルニアによる腰下肢痛と言う診断。保存療法で様子を見ると言う事で、2回通院されたようですが、これでは良くならないと自分で判断され通院を中止。
ネットサーフィンで、私の院を見つけて受診して下さいました。この患者さんは、以前、ある本で幻肢痛の事を読んだ事があり、なんとなくヘルニアについて疑問があったそうです。このような、賢い患者さんばかりなら、治療する側も楽でよいですね。(笑)
ただし、理屈はどうであれ、キッチリと結果を出さないと双方にとって意味がありません。治療直後よりも、翌日のほうが楽になると言うお話しです。この方のように、治療直後ではなく、翌日や翌々日に楽になったと言われる方は沢山おられます。
今日で三回目の治療が終了しましたが、罹患筋と考えられるところは、あ~そこそこと言うポイントがまだまだ沢山あり、症状も大きく改善していることから、椎間板ヘルニアが原因ではなく、筋・筋膜性疼痛症候群の痛みが原因と言える症例です。
カテゴリ:症例報告 ,首・腰の椎間板ヘルニア
ebara / 2011年06月06日(月) 12:14