我が国の痛みの医療は欧米諸国より20年以上遅れています。
痛みに耐えるうちに新たに病気としての痛みが出現する可能性があることを知りません。
悲しいことに医療従事者も知りません。(愛知医科大学痛み講座より)
筋膜性疼痛症候群(MPS)は、ありふれた痛みにも関わらず、医療従事者の多くが知りません。
当院は、体の治療やメンタルサポートだけでなく、情報発信にも力を入れています。
口と顔の痛み.infoと言うサイトに、慢性疼痛患者の心得と言う記事が掲載されてます。
長引く痛みで、お困りの方にお役に立てる記事だと思いますので、全文を掲載しておきます。
口と顔の痛み.info⇒http://www.orofacialpain.info/
慢性痛患者の心得⇒http://www.orofacialpain.info/index/pacients/kr_kokoroe
慢性疼痛患者さんが心得ておくこと
痛みが長引くと、痛みのことしか考えられなくなってきます。
脳の「痛みを感じる部分」と「感情をコントロールする部分」は非常に近い所にありますので、感情は痛みの感じ方に大きく影響します。
落ち込んだりストレスがかかった時に痛みが悪化するのは、この理由によります。
特に「うつ病」と「慢性の痛み」は、深い関係があることが知られています。
また、「今日はいつもより痛いようだ」「あ、今痛みが来た。こんどはまたいつ痛むだろうか」「一生このままだろうか?」と痛みについて繰り返し考えることで、脳の「痛みを感じる部分」と「感情をコントロールする部分」が刺激され、痛みの神経回路がヒートアップして、過剰な活動を始めてしまいます。
つまり、思い詰めれば思い詰めるほど、痛みはひどくなるのです。
こうして長い間繰り返し考え続けると、脳の痛みの回路は勝手に働き続けるようになります。
こうなると、実際に体に異常がなくても、激しい痛みを感じるようになります。
最終的には、脳の痛みを解釈する部分が異常をおこし、頬や足の筋肉を指でちょっと押しただけでも、「痛い」と感じるようになってしまいます。こうなるとかなり治療が難しくなります。
この状態は患者さんが自分で作り出してしまうことが多いため、ここでは、「難治」にならないための心構えをお話しします。
<自分で痛みをコントロールする方法を身につける>
* 痛みについて考える時間を減らす
何かに気を取られたり、集中しているときには痛みを感じないことが多いと思います。
そのようなことを見つけ出し、痛みから気をそらせるよう努力してください。
この「何か」を見つけて、それに集中し、痛みを忘れている時間を増やしてください。(このことを「コーピング」といいます。)
「痛みについて考える時間を減らすこと」は、「脳の痛みの神経の過剰活動を減らすこと」とイコールです。
このコーピングがうまくいくと、薬の効果が現れやすいという大きなメリットがあります。
全く薬を使っていない患者さんでも、「痛みはあるが気にならない」という、不思議な状態で治療を卒業していく方もおられます。
逆に、どんなにたくさん薬を服用しても痛みについて考え続けていると、薬の効果は相殺されてしまいます。
* 落ち込まない
「この痛みには治療法がない(に違いない)」「本当に治るのだろうか?」「この痛みで私の人生はめちゃめちゃだ」などという考えが心に浮かんだら、その悲観的な考えをすぐに中断してください。
落ち込むと、痛みが悪化するだけではなく、痛みを克服しようとする意欲まで失ってしまいます。
* 一人でぼんやりする時間を避ける
多くの場合、忙しいときには痛みを感じません。
逆に、「家でぼんやりテレビを見ているとき」、「寝る直前、なにもすることがないとき」などには、痛みが強く感じられます。
こういうときに感じた痛みが、また患者さんを落ち込ませます。
ですから、何か夢中になれること、空虚ではない時間を意識的に作っていくことが大事です。
* 趣味や気晴らしを有効に利用する
慢性の痛みを持つ患者さんの多くは、今まで好きだった趣味や、友達との外出、旅行などをやめて、家に引きこもりがちになります。
痛いので出かけるのをためらってしまう気持ちはわかりますが、そうして独りで家に引きこもることで、ますます痛みのことを恨めしく考え続ける環境を作ってしまいます。
今まで好きだったこと、好きだった人との活動は続けてください。
<家族や社会から孤立しない>
* 建設的な生活を続ける
朝、決まった時間に起きて、決まった時間だけ家庭や社会で働くという建設的な生活を放棄しないでください。
痛みが長引くと家事を放棄したり仕事を辞めてしまうことがありますが、健全な生活のパターンが崩れると、徐々に、一日中痛みのことを考えながら寝て過ごすようになってしまいます。
こうなると、治療はかなり難しくなります。
* 痛みがあっても、「やるべきことはやる」
痛みを理由に、予定された行動をキャンセルしないでください。
痛みがあっても、家事や仕事などの「やるべきこと」は今までどおり行うようにしてください。
* 痛みを食卓の話題にしない
慢性顔面痛患者さんの9割は女性ですが、痛みにとらわれた生活では、朝起きたときから自分の痛みについて家族にぐちを言い続けてしまうことがあります。
繰り返し痛みについて話し続けることは、脳の痛みの回路を活性化させて、痛みを悪化させる原因になります。
また、うんざりした家族があなたを避けるようになり、孤立してしまうこともあります。
痛みのことは、必要最小限の話題にしてください。
*疼痛緩和よりも社会復帰を
慢性疼痛(特に非定型顔面痛・非定型歯痛)の最大の問題は、患者さんが社会生活を止めて、家に閉じこもってしまうことです。
ひどくなると、一日中横になっているような状態になります。
非定型顔面痛・非定型歯痛は命にかかわる病気ではありませんが、痛みのために、人生の重要な時期を引きこもって過ごし、仕事、友人関係を失ってしまう人は少なくありません。
気がついたら、結婚の機会や仕事を失い、両親もいなくなって、経済的に立ち行かなくなっていたということにならないよう、「社会生活を続けること」、「社会に復帰すること」を第一目標としてください。
<その他の注意>
* 家族に依存しすぎないこと
患者さんが家族に依存し、家族も過剰に手厚く患者さんの世話をしている場合には難治になることがあります。
「痛みがあること」で、なにか得をする・嫌なことをしないですむことを「疾病利得(しっぺいりとく)といいます。
「家族が大事にしてくれる」「家事をしなくて良い」などが代表的な「疾病利得」です。
そして、「疾病利得」がある場合には難治です。
本人が無意識に治りたくないと思っているためです。
* 筋肉をリラックスさせる
体に力が入り、筋肉が固くなってしまわないように気をつけてください。
軽い体操や、こっている場所に温湿布をあてるのもいいでしょう。
筋のこりは、痛みを悪化させます。
また、浅くて速い呼吸もやめて、お腹から、ゆっくり深く呼吸してください。
<患者さんの家族が心得ておくべきこと>
* 疼痛性障害の痛みは、患者さんの脳が感じている痛みで、本物の痛みです。
仮病扱いして、患者さんを責めるのは筋違いです。
* 患者さんに、「まだ治らないのか」とか「我慢できないのか」というようなプレッシャーを与えるのは逆効果です。
ストレスは疼痛を、一層悪化させます。
* 治療を妨げるような事をしない。
(第一選択は、抗うつ薬による薬物療法です。中途半端な知識で、抗うつ薬の減量を忠告したり、他の習慣性のある薬や健康食品を勧めたりしないこと。)
* 患者さんをいたわりすぎることも、痛みを悪化させる可能性があります。
患者さんが自分でできること、今までやってこれたこと(家事など)は、患者さんに任せてください。
毎日痛みについて長々と話を聞くことは、患者さんの意識を痛みに集中させるため、逆効果です。
必要以上に痛みを家族の話題にしないことが重要です。
カテゴリ:痛み痺れ
ebara / 2017年07月25日(火) 15:48